Vol.01: TAKENOSENKO - Roll dyeing -

Vol.01: 竹野染工 -ロール捺染-

堺市、大阪府の一角。古来より、この地はさまざまな産業が息づいています。

人口一人当たり製造品出荷額が政令都市中第1位を誇るこの街では、かつては鉄砲を作り始め、その後は刃物、自転車、線香といった幅広い商品を生産してきた工場が立ち並びます。

中でもこの街の象徴とも言える産業、それが木綿産業。

かつて布おむつや寝巻き、ガーゼといった日用品から始まり、今では「手ぬぐい」の一大生産地として有名です。

そんな手ぬぐい作りの歴史を紡いできたのが、70年以上もその技術を維持し続けている竹野染工です。

 

約100年前に誕生したロール捺染は、当初大量生産のために生まれた手法でした。しかし、需要の減少とともに多くの同業者が廃業を余儀なくされる中、竹野染工は転機を迎えます。彼らは、一度は不可能とされた"ロール捺染の両面染め"に成功し、付加価値の高い製品へとシフトしていきました。

手ぬぐい染色の主な方法は注染、プリント、そしてロール捺染の3つ。

現在全国でロール捺染を扱える職人は10人以下、専用の機械もわずか6台しか存在せず、

そのうちの2台を竹野染工が所有し、70年以上も使用し続けている古い機械です。これが壊れてしまうと技術継承が困難になることから、その存在は非常に貴重なものとなっています。

ロール捺染とは、柄が彫り込まれた金型に染料を流し、そこに晒を押し当てて染めていく技法です。

「凹版印刷」という手法を用いており、40kgもの重さがある金属板に図柄を彫り込む銅版画のような技術です。ロール状の金型がインクを拾い上げ、布に染め上げることからこの名がついています。染められる生地は2本のロールに挟まれ、片方が生地を染め、もう片方が染料を押し込む役割を果たします。ただ機械を回すだけでなく、圧力の調整も必要で、強すぎると柄がつぶれ、弱すぎると模様がぼやけてしまうため、職人の微妙な調整が必要です。

その中で特に重要なのが「刃」です。染めの過程で無駄な染料を削ぎ落とす役割を果たす刃は、職人の手によってステンレスの金属片からやすりや砥石を使って研ぎ澄まされます。

この刃の鋭さは絶妙で、鋭すぎても薄すぎても強度がなくなり、キレイに柄を出すことができません。刃が完璧でないと、柄がぼやけてしまい染め直しになってしまいます。その微妙な研ぎ具合を見極められるようになって初めて一人前の職人と言えるのです。

また、竹野染工では染料も全てオリジナル。50以上の色をベースに、ブレンドしながらどんな色でも作り出します。0.1gの配合の差で色合いが変わるほど、色彩表現は無限大です。さらに、染まり具合を調整するための粘度も重要で、染料が水っぽすぎてもねっとりしすぎても染まりにくくなります。その微調整も職人の手仕事です。

そして、色止め剤となる糊も自社製品を使用し、色落ちしにくいものを作り出しています。

手ぬぐいの染め方としてロール捺染はあまり知られていないかもしれません。

しかし、竹野染工では、ここでしかできない技術、つまり表と裏で色が違う両面染めを開発しました。

これは厚手の生地であればそれほど難しい技術ではありませんが、手ぬぐいのような薄い生地で両面染めを実現するのは、世界でもここ、竹野染工だけです。

その職人の技が竹野染工の手ぬぐいを、世界に一つしかない逸品へと昇華させています。

ブログに戻る